2020年全国マンション市場動向①【首都圏は2013年比53%減】

2020年の全国マンション市場動向が不動産経済研究所により発表されました。
※発表があったのは2月下旬で大分遅くなってしまったことをお詫び申し上げます。例年この時期は多忙なのですが、今年はさらに時間に追われてまして…。

発売戸数は59,907戸(前年比15.2%減(10,753戸の減少))
1戸あたり価格4,971万円(前年比3.8%増、㎡単価は前年比4.4%増)
とのことです。

販売戸数減に関してはコロナの自粛期間・経済活動の停滞期間が大きな影響を与えているので論じるまでもありませんが、【賃貸版】などで述べているように分譲予定で建設されていたものが賃貸に流れてしまうケースが珍しくなく、コロナによる停滞で”販売が後ろにズレているだけ”といったような単純な状況にはないことにご注意いただきたいですね。

コロナ禍で工期が伸びるようなケースもなくはないですが、販売予定だった物件の供給がシンプルに後ろにズレるだけのような状況であればいずれ少なからず需給の悪化要因になるので価格には下落圧力が働くでしょう。
しかしながら、マンション分譲以外にも稼ぐ術が多々ある大手デベロッパーを中心にそういった”需給調整”も図られているため、需給の乱れが見られるエリア・物件は限られているのが現状ですね。

コロナ前の2019年も前年に比べ1万戸近く減ってしましたし、そこからのさらに1万戸超の減少は、コロナの影響だけで片付けられるものではないと思っています。

ちなみに、過去10年間で最も供給が多く全国で10万戸以上が供給された2013年と比べると、

首都圏:56,478戸(2013年)⇒27,228戸(2020年)52%減
近畿圏:24,691戸(2013年)⇒15,195戸(2020年)38%減
その他:24,113戸(2013年)⇒17,484戸(2020年)27%減

といった具合で首都圏の顕著過ぎる減少にちょっとひきますね…。これだけ減るということはマンション用地自体も多少減っているところもあるのでしょうが…。仮に2011~2015年(首都圏だけで4万戸超)の水準で供給されていたら流石に需給の悪化で相場は下落していますよね…。まぁ、新築の供給が減り好みの物件がなかったがために中古へ流れる方も少なからずいらっしゃるわけである程度"供給に引っ張られる形で需要が生み出されるもの"ではあるのですが、たった数年でここまで極端に減少するというのはちょっと予想しにくい出来事だったと言えますね。

最近で言うとタピオカブームのような嗜好品などであれば短期間で売上(販売数)は大きく変わるものですが、人々の生活に密接に関係するものの供給が短期間で半減するケースは通常あまりないはずです。マンション(不動産)の販売って未だにブラックボックスなところが多いですし本当に特殊な世界だと改めて思いましたわ…。

次に首都圏のエリアごとの数字を見ながら価格についてもコメントしていきましょう。

・発売戸数(前年比)、平均価格(前年比)
都区部:10,911戸(-20.6%)、7,712万円(+5.8%)
都下:3,242戸(+27.8%)、5,460万円(-0.5%)
神奈川県:5,586戸(-22.2%)、5,436万円(+2.7%)
埼玉県:3,367戸(-26.5%)、4,565万円(+1.2%)
千葉県:4,122戸(+28.8%)、4,377万円(-0.5%)

首都圏全体で言うと前年比で1.7%の上昇という誤差の範囲内ですし、直近4年間で見ても「5,908⇒5,871⇒5,980⇒6,083」という推移なのでなんだかんだ未だ上昇傾向を感じはするものの、この数字からは明確に上昇しているとまでは言えません。

ただ、エリアごとに見ると面白い傾向が出ています。販売戸数が前年比で大きく減少したエリアは価格が上昇し、大きく増加したエリアでは価格が下落しているのです。
この結果自体は正直出来過ぎ(?)なぐらいだと思うのですが、本来あるべき”需給と価格の関係”が多少なりとも機能していて安心しました(笑)。
首都圏の2017年と2020年を比べた場合、価格の上昇率は3%ほどですが供給戸数はおよそ23%減という感じですので、これはもう本当に供給が顕著に減った分(減らされた分)の価格上昇(反動)と言っていいのではないかと思いますね…。

ちなみに、首都圏全体の供給戸数に占める都区部の割合を計算してみると2020年は40.1%で、過去5年間(45.7%⇒41.3%⇒44.6%⇒43.0%⇒44.0%)にはない近年最も低い水準になりました。
都区部は賃貸マンションのニーズが特に高く"調整(例えば、分譲予定のものを一棟売りしてしまうなど)"しやすいエリアが多いことが表れた結果なのかなと…。

最後に坪単価についても付け加えておきましょう。
・坪単価(前年比)
首都圏全体:306万円(+5.2%)
都区部:414万円(+11.4%)
都下:266万円(+1.5%)
神奈川県:270万円(+7.9%)
埼玉県:220万円(+4.2%)
千葉県:202万円(+1.0%)

現状、平均専有面積の推移が確認出来ませんので(コンパクト住戸の販売比率が高くなると基本的に平均単価は上昇します)、確かなことは言えないのですが、面積の小さなものの供給が多くなった(多くした)ことが単価上昇の大きな要因になっているのではないでしょうか。

とは言え、都区部は11.4%も上昇しての400万円突破ですし、ここまで上昇しているとは思いませんでした。
そもそもコンパクトの供給が増えれば平均価格(グロス)には下落圧力が少なからず働くわけですし、その中で価格(グロス)がわずかながらも上昇傾向を維持していること自体に脅威を感じたりもしますね…。

このあたりは平均専有面積などの数字が分かったタイミングでまた分析していこうと思います。

次回は恒例のデベロッパー別の供給戸数を取り上げます。既に報道されている通りで今年は大きな動きがありましたね。

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