台東区・江東区・荒川区・墨田区のマンション市況【2020年市場動向フィードバック④】

さて、本日の第4回目は台東区・江東区・荒川区・墨田区の2020年をフィードバックしてみましょう。
※首都圏や都区部の全体感については以下をご参照下さい。
2020年全国マンション市場動向①【首都圏は2013年比53%減】
価格高騰の主要因はプレミアム住戸とコンパクト化【2020年マンション市場動向フィードバック①】

不動産経済研究所によると4区の数字はこちらで(「順位」や「前年比」などに関しては私が計算したものになります)、
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さらに、2006年以降の平均単価の動きをグラフで表したものが以下になります。
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※いずれの結果にもいわゆるワンルーム投資マンションは含まれておりません。

・台東区【3年ぶりの平均専有面積50㎡台】
台東区は3年ぶりに平均専有面積50㎡台に復帰しました。とは言え、平均専有面積の上昇は誤差の範囲内と言った感じで、とりわけファミリータイプが増えたという印象もありません。

相変わらずコンパクトなプラン中心となる中でギリギリまで単価を追求している印象が強く、今年の単価上昇には住友不動産の2物件が少なからず影響を及ぼしている感じですかね。

年間供給戸数は436戸と少なめで、うち以下のシティハウス2物件が119戸を占めています。港区のグランドヒルズ南青山などと同様でどちらも2020年末時点での契約率は非常に低く、とりあえず出すだけ出した形になりますね。

なお、平均単価の過去比は144%ということで23区の全体平均に一致しています。23区全体平均においては平均専有面積はそこまで減少していないのに対して台東区は85%と大きく減少させてのものにはなりますが、23区内で近い位置づけとなる文京区・中央区・江東区などと同水準の上昇率を記録しているのは興味深い点でしょう。
面積帯を考慮する必要はありますが、こういったエリアの上昇率は4割強で考えるのが無難と言えそうです。

参考)2020年の主な供給(カッコ内は平均坪単価)(順不同)
プレミスト蔵前(約380万円)
シティハウス御徒町(約405万円)
シティハウス浅草橋(約375万円)
リビオレゾン上野入谷ザ・テラス(約355万円)

・江東区【相変わらず特定の物件の影響が強いがこの平均専有面積でも高い単価上昇率】
年間供給戸数は昨年よりもさらに増え、23区内で港区に次ぐ第二位となっているのですが、プラウドタワー亀戸クロスが440戸、ブランズタワー豊洲が487戸ということで2物件だけで全体の3分の2以上を占めているのも事実です。

昨年はシティタワーズ東京ベイとブランズタワー豊洲で半分以上を占めていたように江東区は大きな土地の出物が少なくなく大規模物件が供給されやすいエリアなのでこういったケースはけして珍しくありません。そのため、このような状況こそが江東区の特徴そのものにもなってくるのですが、今年の単価上昇は江東区内最高レベルの単価水準となったブランズタワー豊洲とプラウドタワー亀戸クロスの影響そのままという感じにはなるでしょうね。

なお、「過去比」での平均価格上昇率は先ほど台東区のところで言及したように中央区や文京区などとも近似しており江東区はそれらの中で最も大きな平均専有面積を保ちつつこれだけの上昇率を記録しているあたりに少なからず底堅さやファミリー人気を感じることが出来ますね。

参考)2020年の主な供給(カッコ内は平均坪単価)(順不同)
プラウドタワー亀戸クロス(約370万円)
ジオ南砂町(約305万円)
ブランズタワー豊洲(約415万円)
ブリリアタワー有明ミッドクロス(約340万円)

・荒川区【とりわけ目立つ物件がない中での159%の単価上昇】
2020年の荒川区は以下のように日暮里界隈での供給が非常に盛んで区全体としても前年比で供給が大きく増加しました。

昨年は「過去比」での上昇率が23区中1位だったのに対し今年は3位ということで少し下がってはしまったものの、2018~2019年同様にスケールあるブランド物件やタワマンなどの大規模物件がない中でこのような159%という高い単価上昇率を記録しているあたりからは荒川区の躍進ぶりを感じますよね。

なお、近年の傾向としては「過去比」で86%というコンパクト化が進んでおり台東区と似た傾向にあるのですが、台東区に比べれば平均専有面積は大分大きいですし、さらに高い単価上昇率を記録しているあたりからも勢いを感じることが出来ます。

参考)2020年の主な供給(カッコ内は平均坪単価)(順不同)
イニシア日暮里テラス(約325万円)
クレヴィア日暮里ザ・プレイス(約340万円)
パークスクエア日暮里(約360万円)
シティハウス日暮里(約365万円)
プラウド日暮里テラス(約325万円)

・墨田区【今年は最下位脱出しましたが…】
コンパクトで有名(?)な墨田区の2020年の平均専有面積は、前年比で7%上昇し、供給が低調だった千代田区を抜き最下位から脱出しました。

ただ、以下のように新規供給は相変わらず少なめで、価格上昇にも勢いを感じることもありません。
大きな土地が出にくいエリアで小ぶりな物件が多いということもあるのでしょうが、近隣区である台東区や江東区などと比較すると「過去比」での単価上昇は小さいですね。

参考)2020年の主な供給(カッコ内は平均坪単価)(順不同)
ウィルレーナ森下(約355万円)
パレステージ墨田立花(約265万円)
グローリオコンフォート東京菊川(約310万円)

◎台東・江東・荒川・墨田の総評
ここ数年のこういった分析記事の際には必ずと言ってもいいぐらいに申し上げているように23区全体での価格高騰の中で東と西を比べた場合「東高西低」の傾向が少なからずあり、今年はさらにその傾向が進んだように思います。

次回取り上げる4区(世田谷・杉並・品川・大田)と比べた場合、「過去比」での上昇率が高い区が多いのはこれまで同様で、そもそもそれら西側の区は東側の区に比べ高騰前の坪単価が高かったので"伸びしろが小さくなりやすい"という側面が少なからずあったのは事実ですが、2020年はこれら4区の方が全体的に高い上昇率を記録したことでさらに勢いの差を感じる結果になっています。

とは言え、"西"の杉並区や品川区はこれら4区を上回る平均単価400万円台であり、絶対的にこちらよりも高い水準を保っている形にはなるので、今後台東区や江東区にとっては平均単価400万円の壁を破れるか否かというあたりも1つのポイントになってくるでしょうね。

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