世田谷区・杉並区・品川区・大田区のマンション市況【2020年市場動向フィードバック⑤】

さて、本日の第5回目は世田谷区・杉並区・品川区・大田区の2020年をフィードバックしてみましょう。
※首都圏や都区部の全体感については以下をご参照下さい。
2020年全国マンション市場動向①【首都圏は2013年比53%減】
価格高騰の主要因はプレミアム住戸とコンパクト化【2020年マンション市場動向フィードバック①】

不動産経済研究所によると4区の数字はこちらで(「順位」や「前年比」などに関しては私が計算したものになります)、
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さらに、2006年以降の平均単価の動きをグラフで表したものが以下になります。
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※いずれの結果にもいわゆるワンルーム投資マンションは含まれておりません。

・世田谷区【平均専有面積は大きく低下し、単価も伸び悩み】
2018年、2019年は2年連続で「平均専有面積を上昇させつつも平均坪単価を上昇」させていたのですが、2020年は平均専有面積を大きく減少させてしまいました。

2020年はコロナの影響もあってか供給戸数がさらに減少しましたし、以下のように主な供給物件にもとりわけ目立つようなスケール感のあるものがないことも幾らか影響はしているとは思いますが、400万円に迫る単価高の影響もあってか狭小化の波が強まっている印象ですね。
2020年の平均専有面積は江東区に抜かれ、豊島区や板橋区などと同じぐらいの水準にまで低下しています。

今年に限ったことではないのですが、平均単価の「過去比」での上昇率も23区内では低調な方ですし、前回の記事で書いた"東高西低"の影響を最も表してしまっている区という印象でもあります。

参考)2020年の主な供給(カッコ内は平均坪単価)(順不同)
センチュリー千歳烏山レジデンス(世田谷フォレスト)(約265万円)
ザ・パークハウス経堂レジデンス(約365万円)
ディアナコート三軒茶屋(約490万円)

・杉並区【3年連続面積大幅減少で数年前とのギャップが凄い】
2020年も供給戸数が少なかったので特定の物件の影響も強かったように思いますが、平均単価・平均専有面積共に減少ということで低調な印象の年にはなりました。

前年の記事で書いたように2014~2017年頃は平均専有面積が70㎡前後で"世田谷区と大差ない水準のファミリータイプ中心の区"だったのですが、3年連続で平均専有面積が大きく減少し、単価高騰の影響なのか狭小化の進んだ台東区や墨田区と肩を並べるレベルになってしまっていることも驚きですね。

この後の品川区も供給戸数が少なくなっているとは言え狭小化が顕著ですし、区内でもかなりの好立地でないと坪単価400万円を超えるとファミリータイプの動きが鈍くなる傾向が少なからずあるように思います。

参考)2020年の主な供給(カッコ内は平均坪単価)(順不同)
プラウド荻窪三丁目(約480万円)
オープンレジデンシア西荻窪(約400万円)
プラウド杉並方南町(約365万円)

・品川区【低調な供給で平均専有面積40㎡台に】
供給戸数は2019年比で16.5%となるたったの127戸ですのでこの数字を持って何かを論じるべきではないと思います。
特に主な供給物件が以下のコンパクトプラン中心の2物件だったがために平均専有面積は23区中21位の50㎡未満にまで低下していますしね。

ただ、価格高騰によりファミリータイプの供給がしにくくなっている側面も少なからずあるはずで、杉並区でも言及したように余程の好立地でない限り平均専有面積を豊かなものにするのが難しくなった結果このような数字になっているということも言えると思います。

駅徒歩5分圏内や都心アクセス良好な駅を最寄りとする物件であればコンパクト中心のプランニングにした方がデベロッパーの採算は取りやすいでしょう…。

参考)2020年の主な供給(カッコ内は平均坪単価)(順不同)
オープンレジデンシア大崎(約435万円)
ピアース品川中延(約435万円)

・大田区【こちらも"東高西低"を感じずにはいられない】
2019年はコンパクトなデュオステージ蒲田ピアース馬込(平均専有面積30㎡ちょっと)がかなり強烈に効いてしまった結果、平均専有面積が23区中20位まで低下したのですが、今年は以下のように普通にファミリータイプ物件が中心になったことで大分戻りました。

ただ、それでも50㎡台、かつ、「過去比」で86%という水準でしかありませんし、単価上昇が23区中20位の127%という低調な数字となる中で面積もこれだけ減少していることを考えるとやはり世田谷区同様に"東高西低"を強く感じてしまいますよね。

参考)2020年の主な供給(カッコ内は平均坪単価)(順不同)
アールブラン鵜の木(約320万円)
リビオ蒲田ザ・ゲート(約380万円)
イニシア大森町N’sスクエア(約320万円)
アールブラン武蔵新田(約320万円)
ザ・ガーデンズ大田多摩川(約265万円)

◎世田谷・杉並・品川・大田の総評
総評となるとやはり"東高西低"になるでしょうね。
前回取り上げた台東・江東・荒川・墨田の「過去比」での上昇率は133~159%で、墨田区以外は144、145、159%という23区全体平均144%以上の水準を記録しているのですが、これら4区は最も高い品川区でも137%ということで大きく水をあけられているのです。

杉並区や品川区は平均単価で400万円を超えており、サラリーマン家庭では手が届きにくい水準になっていることが伸び悩みの大きな要因になっているのだとは思いますが、大田区や世田谷区などの数字を見るとそれ以上に低調に感じるのも事実で、世代交代に伴い低地などを厭わず都心アクセスに優位性を求める層が相対的に増えているという現実も幾らか影響しているのかなと。

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