北区・江戸川区・足立区・葛飾区のマンション市況【2020年マンション市場動向フィードバック⑦】
本日の第7回目は北区・江戸川区・足立区・葛飾区の2020年をフィードバックしていきましょう。
※首都圏や都区部の全体感については以下をご参照下さい。
⇒2020年全国マンション市場動向①【首都圏は2013年比53%減】
⇒価格高騰の主要因はプレミアム住戸とコンパクト化【2020年マンション市場動向フィードバック①】
不動産経済研究所によると4区の数字はこちらで(「順位」や「前年比」などに関しては私が計算したものになります)、

さらに、2006年以降の平均単価の動きをグラフで表したものが以下になります。

※いずれの結果にもいわゆるワンルーム投資マンションは含まれておりません。
・北区【平均単価は初の300万円台】
2019年同様に単価帯のバラツキが大きく感じる区で、2020年は高単価な赤羽勢に加え王子勢も加わったことで平均単価は大幅に上昇し、初の300万円台となりました。
ただ、平均単価は前年比で127%の大幅上昇となった一方で「過去比」は114%と23区中最下位に沈むという少々違和感のある結果になっています。
過去比のベースとなる北区の2010~2012年は不思議なほどしっかりとした単価帯を記録しており(特に高かった2010年はプラウドシティ赤羽(平均坪単価約265万円)があった)、そこの影響が大きいのは確かではあるものの、以下のザ・パークハウスオイコス赤羽志茂やプレミスト東京王子の平均坪単価からも実感出来るように本当に単価の上下差が大きいと感じますよね。
ネベル赤羽はコンパクト目ゆえの強烈な単価というところもありますが、そもそものこういった北区の顕著な二極化的な要素が分析を難しくしているところもあるように思います。
そのネベル赤羽のようなコンパクトは平均単価だけでなく平均専有面積にも大きな影響を及ぼしていて初の300万円超は50㎡台中盤まで平均専有面積が減少したことの"副産物"という印象も小さくありません。
2020年の平均単価と平均専有面積は、大田区や練馬区とかなり近似しているのも着目すべき点の1つになるでしょうか。
参考)2020年の主な供給(カッコ内は平均坪単価)(順不同)
デュオヴェール赤羽イースト(約300万円)
ザ・パークハウスオイコス赤羽志茂(約235万円)
ウィルレーナ東十条(約340万円)
飛鳥山レジデンス(約380万円)
ネベル赤羽(約400万円)
クレヴィア赤羽ステーションテラス(約330万円)
ヴェレーナグラン赤羽北フロント(約285万円)
プレミスト東京王子(約175万円)
ガーデンクロス東京王子(約315万円)
・江戸川区【安定して低調…】
この後に取り上げる葛飾区と共に依然として安定的に平均専有面積70㎡程度を保つことが出来ている数少ない区になります。
昨今はファミリータイプのみで構成された物件でも中住戸に60㎡台の3LDKがないケースはほとんど見かけません。つまり、平均専有面積が70㎡台中盤を超えるような物件はほぼないはずなので、区の平均専有面積が70㎡に近いということは"コンパクトプランがほぼ供給されていない"ことを意味しているのです(このデータにはカウントされていないいわゆるワンルーム投資マンションを除いての話です)。
そのようにコンパクトプランの供給に適さないエリアが多いため先ほどの北区のように平均専有面積の低下と共に平均単価が大幅上昇するといったことは起こりにくく、2020年も"安定して低調"な結果という表現がしっくりきますね。
2021年はついにプラウドタワー小岩ファーストという駅徒歩1分の再開発タワマンが分譲されますので大分異なる数字になるのだとは思いますが…。
参考)2020年の主な供給(カッコ内は平均坪単価)(順不同)
オーベルグランディオ平井(約220万円)
バウス西葛西清新町(約260万円)
プレサンスロジェ西葛西(約260万円)
リビオシティ西葛西親水公園(約260万円)
ウィルローズ小岩(約230万円)
エクセレントシティ船堀Ⅴ(約260万円)
バウス瑞江(約255万円)
・足立区【2020年も粒揃いの供給で過去比上昇率第4位】
2019年は千住ザ・タワーの影響が非常に大きかったものの、千住ザ・タワーを除いた平均単価も計算してみたところ240万円超と2020年よりも高いぐらいでしたし、2020年も2017~2018年あたりと比べるとしっかりと上昇しているので、前年時に言及したように足立区内の広域での底上げを感じる結果と言えると思います。
「過去比」は千住ザ・タワーの影響があるとはいえ、23区中4位の147%という結果ですしね。
依然として平均専有面積約70㎡を維持する江戸川区や葛飾区よりも平均単価が安い中での平均専有面積63㎡というのは、やや気になるところではあるものの、23区中最も平均単価が安い区だけに余力(上昇余地)はもう少しありそうです。
参考)2020年の主な供給(カッコ内は平均坪単価)(順不同)
レジデンスノーブル西新井本町(約210万円)
ザ・パークハウス五反野(約240万円)
サンリヤン北綾瀬(約205万円)
ブランズ北千住(約310万円)
ヴェレーナシティ西新井(約210万円)
パレステージ六町Ⅳ(約275万円)
・葛飾区【211分の169がプラウドタワー金町】
2019年は8割超がシティテラス金町(平均坪単価約)だったのですが、2020年は8割がプラウドタワー金町、残りの42戸もライオンズ綾瀬グランフォートで2物件しか供給がなかったので、"参考外"としか言いようがないように思います。
北区同様に初の平均単価300万円台ではありますが、意味合いは大きく異なるでしょう。
参考)2020年の主な供給(カッコ内は平均坪単価)(順不同)
プラウドタワー金町(約310万円)
ライオンズ綾瀬グランフォート(約270万円)
◎北・江戸川・足立・葛飾の総評
葛飾区はそのようにプラウドタワー金町の影響が大き過ぎたわけですが、昨年の足立区の千住ザ・タワーしかりで、坪単価200万円台の物件が中心となる江戸川・足立・葛飾の3区においては、駅前再開発タワマンなどの大規模供給がどうしても大きな影響を与えてしまいますね。
2021年はそのプラウドタワー小岩ファーストにより江戸川区が大幅上昇するでしょうし、「駅前再開発タワマンのような目玉物件」と「それ以外の一般的な物件」との単価差が大きくなりやすいエリアですので、そのあたりの影響を考慮しつつ慎重に吟味する必要があるでしょう。
また、そういったタワマンなどが人気を博すことでノンタワマンなどごくごく一般的な周辺物件の価格設定にも少なからず影響が出てくるものなので、そういったケースにおいては新築だけでなく中古の取引相場と比較しながら判断すると良いでしょうね。
昨今は新築よりも中古の上昇度合いが顕著ではあるものの、基本的に中古は新築の価格に引っ張られて上昇するものですので、新築タワマンが新築相場を引っ張り上げても「ノンタワマンの中古」が上昇するまでにはタイムラグ(タワマンの中古が引っ張られるのは早いがノンタワマンはダイレクトな比較対象ではないのでそう単純な話ではない)が生じるものです。
※首都圏や都区部の全体感については以下をご参照下さい。
⇒2020年全国マンション市場動向①【首都圏は2013年比53%減】
⇒価格高騰の主要因はプレミアム住戸とコンパクト化【2020年マンション市場動向フィードバック①】
不動産経済研究所によると4区の数字はこちらで(「順位」や「前年比」などに関しては私が計算したものになります)、

さらに、2006年以降の平均単価の動きをグラフで表したものが以下になります。

※いずれの結果にもいわゆるワンルーム投資マンションは含まれておりません。
・北区【平均単価は初の300万円台】
2019年同様に単価帯のバラツキが大きく感じる区で、2020年は高単価な赤羽勢に加え王子勢も加わったことで平均単価は大幅に上昇し、初の300万円台となりました。
ただ、平均単価は前年比で127%の大幅上昇となった一方で「過去比」は114%と23区中最下位に沈むという少々違和感のある結果になっています。
過去比のベースとなる北区の2010~2012年は不思議なほどしっかりとした単価帯を記録しており(特に高かった2010年はプラウドシティ赤羽(平均坪単価約265万円)があった)、そこの影響が大きいのは確かではあるものの、以下のザ・パークハウスオイコス赤羽志茂やプレミスト東京王子の平均坪単価からも実感出来るように本当に単価の上下差が大きいと感じますよね。
ネベル赤羽はコンパクト目ゆえの強烈な単価というところもありますが、そもそものこういった北区の顕著な二極化的な要素が分析を難しくしているところもあるように思います。
そのネベル赤羽のようなコンパクトは平均単価だけでなく平均専有面積にも大きな影響を及ぼしていて初の300万円超は50㎡台中盤まで平均専有面積が減少したことの"副産物"という印象も小さくありません。
2020年の平均単価と平均専有面積は、大田区や練馬区とかなり近似しているのも着目すべき点の1つになるでしょうか。
参考)2020年の主な供給(カッコ内は平均坪単価)(順不同)
デュオヴェール赤羽イースト(約300万円)
ザ・パークハウスオイコス赤羽志茂(約235万円)
ウィルレーナ東十条(約340万円)
飛鳥山レジデンス(約380万円)
ネベル赤羽(約400万円)
クレヴィア赤羽ステーションテラス(約330万円)
ヴェレーナグラン赤羽北フロント(約285万円)
プレミスト東京王子(約175万円)
ガーデンクロス東京王子(約315万円)
・江戸川区【安定して低調…】
この後に取り上げる葛飾区と共に依然として安定的に平均専有面積70㎡程度を保つことが出来ている数少ない区になります。
昨今はファミリータイプのみで構成された物件でも中住戸に60㎡台の3LDKがないケースはほとんど見かけません。つまり、平均専有面積が70㎡台中盤を超えるような物件はほぼないはずなので、区の平均専有面積が70㎡に近いということは"コンパクトプランがほぼ供給されていない"ことを意味しているのです(このデータにはカウントされていないいわゆるワンルーム投資マンションを除いての話です)。
そのようにコンパクトプランの供給に適さないエリアが多いため先ほどの北区のように平均専有面積の低下と共に平均単価が大幅上昇するといったことは起こりにくく、2020年も"安定して低調"な結果という表現がしっくりきますね。
2021年はついにプラウドタワー小岩ファーストという駅徒歩1分の再開発タワマンが分譲されますので大分異なる数字になるのだとは思いますが…。
参考)2020年の主な供給(カッコ内は平均坪単価)(順不同)
オーベルグランディオ平井(約220万円)
バウス西葛西清新町(約260万円)
プレサンスロジェ西葛西(約260万円)
リビオシティ西葛西親水公園(約260万円)
ウィルローズ小岩(約230万円)
エクセレントシティ船堀Ⅴ(約260万円)
バウス瑞江(約255万円)
・足立区【2020年も粒揃いの供給で過去比上昇率第4位】
2019年は千住ザ・タワーの影響が非常に大きかったものの、千住ザ・タワーを除いた平均単価も計算してみたところ240万円超と2020年よりも高いぐらいでしたし、2020年も2017~2018年あたりと比べるとしっかりと上昇しているので、前年時に言及したように足立区内の広域での底上げを感じる結果と言えると思います。
「過去比」は千住ザ・タワーの影響があるとはいえ、23区中4位の147%という結果ですしね。
依然として平均専有面積約70㎡を維持する江戸川区や葛飾区よりも平均単価が安い中での平均専有面積63㎡というのは、やや気になるところではあるものの、23区中最も平均単価が安い区だけに余力(上昇余地)はもう少しありそうです。
参考)2020年の主な供給(カッコ内は平均坪単価)(順不同)
レジデンスノーブル西新井本町(約210万円)
ザ・パークハウス五反野(約240万円)
サンリヤン北綾瀬(約205万円)
ブランズ北千住(約310万円)
ヴェレーナシティ西新井(約210万円)
パレステージ六町Ⅳ(約275万円)
・葛飾区【211分の169がプラウドタワー金町】
2019年は8割超がシティテラス金町(平均坪単価約)だったのですが、2020年は8割がプラウドタワー金町、残りの42戸もライオンズ綾瀬グランフォートで2物件しか供給がなかったので、"参考外"としか言いようがないように思います。
北区同様に初の平均単価300万円台ではありますが、意味合いは大きく異なるでしょう。
参考)2020年の主な供給(カッコ内は平均坪単価)(順不同)
プラウドタワー金町(約310万円)
ライオンズ綾瀬グランフォート(約270万円)
◎北・江戸川・足立・葛飾の総評
葛飾区はそのようにプラウドタワー金町の影響が大き過ぎたわけですが、昨年の足立区の千住ザ・タワーしかりで、坪単価200万円台の物件が中心となる江戸川・足立・葛飾の3区においては、駅前再開発タワマンなどの大規模供給がどうしても大きな影響を与えてしまいますね。
2021年はそのプラウドタワー小岩ファーストにより江戸川区が大幅上昇するでしょうし、「駅前再開発タワマンのような目玉物件」と「それ以外の一般的な物件」との単価差が大きくなりやすいエリアですので、そのあたりの影響を考慮しつつ慎重に吟味する必要があるでしょう。
また、そういったタワマンなどが人気を博すことでノンタワマンなどごくごく一般的な周辺物件の価格設定にも少なからず影響が出てくるものなので、そういったケースにおいては新築だけでなく中古の取引相場と比較しながら判断すると良いでしょうね。
昨今は新築よりも中古の上昇度合いが顕著ではあるものの、基本的に中古は新築の価格に引っ張られて上昇するものですので、新築タワマンが新築相場を引っ張り上げても「ノンタワマンの中古」が上昇するまでにはタイムラグ(タワマンの中古が引っ張られるのは早いがノンタワマンはダイレクトな比較対象ではないのでそう単純な話ではない)が生じるものです。
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