プライム金沢文庫【オイコスありき、南向き住戸率低でもここまでやるのは立派】2階68㎡4,390万円(坪単価213万円)

続けて、プライム金沢文庫。

設計・施工は森本組です。

京急電鉄の近年のスケール感のある「プライム」にはプライム港南台プライムパークス上大岡ザ・レジデンスプライムスタイル川崎プライム大田矢口、プライム川崎小島新田(この後に分譲予定)があるのですが、これら5つのうちプライムスタイル川崎(18階建でちょっとしたタワーフォルム)以外の4物件には共通点があります。

大半の読者の方ならばお分かりのように長谷工設計・施工という点ですね。
当物件は総戸数100戸ちょっとなのでそれほど大きなものではありませんが、スケールや階建からしても”普通ならば”長谷工設計・施工になっていたはずで、そうなっていないのはやはり長谷工を前面に押し出したザ・パークハウスオイコス金沢文庫のやらかし(売れ行き不振)なのでしょうね…。

デベロッパー(企業)としてはそこに最大限配慮するのは当然のことではあるのですが、あから様過ぎて長谷工がちょっといたたまれない感じすらあります(※)。
※長谷工はコスト次第で違ったパフォーマンスを実現出来るゼネコンですのでどちらかと言うとコスト削減を重視した(ブランディングも含め販売価格とのミスマッチを検討者に感じさせてしまった)三菱地所側に非があると思います。ここの京急電鉄はそのように普段から長谷工を頼りにしているわけですし、どうせならば長谷工を使った上で消費者を納得させるものを提案して欲しかったという思いは小さくないです。この南北に長い敷地形状で南向き住戸率を低くするのであればワイドスパン住戸を設けるのはどのゼネコンだろうが難しいことではないですし、コーナー部の柱をオフセットしたコーナーサッシや全戸玄関窓など長谷工らしさ全開でオイコスの不振をエネルギーに変える方法も十分にあったはずです。

また、第7種高度地区(最高高さ31m)で11階建ではなく10階建とし二重床にしているのも完全に"オイコスへの当て付け"と言わざるを得ないでしょう。
直床と二重床の遮音に関しては音の種類によって優劣があるので一概に二重床が上とまでは言いきれませんし、フカフカの歩行感が気にならない方にとっては大きなマイナスにはなりません。常々言及していることではありますが、10階建でも11階建と同じMaxの容積率を確保するために建築面積は相応に大きくなっていますのでその分空地が減っていますし、高さ制限が厳しい中で階高を確保して二重床とすることによる弊害もゼロではないのです。

ただ、オイコスの惨状からするとこのような施策に傾倒するのがリスクを回避するための最善策になるのだと思いますし、さらに当物件は前回の記事で書いたようなきれいなアウトフレーム、さらにさらに共用・デザイン面でのパフォーマンスにも力を入れているのは立派で、なかなか出来ることではないと感心させられるのも事実ですね。

共用面の最大の特長は、1階駐車場周りの設計でしょう。駐車場を建物1階部分とし、駐車場動線を建物内部深いところまで確保したことでエントランスの内側に車寄せを実現しています。上述のように10階建としたことで建築面積はわりと大きなものとなってはいるのですが、1階に住戸を設けず1階内部に屋外と屋内を連動させた空間とすることで非常に贅沢な空間としているのです。

また、イーストレジデンスとウエストレジデンスの間になるフロア中央部には中庭的な緑のスペース、さらに横須賀街道沿いとなるイーストレジデンスの1階部分には約45mにも及ぶ大々的な壁面緑化を施すなどの工夫も見られます。

エントランスは二層吹抜となった見栄えするものですし、外観デザインも横浜らしいレンガ色などを用いた繊細さが窺えるものになっており専有部から共用部に至るまで本当に差別化要素に事欠かないものとなっていることに驚かされたというのが率直な感想であり、二重床でお茶を濁すだけなどといったしょうもない差別化だけにとどまることなく、随所に拘りを感じることが出来ますね。

共用施設もエントランスの近くに設けられたオープンラウンジとパルダリウム、ガーデンビューラウンジだけでも凄いのにワークスペース、オーナーズスタジオ(キッチン付でパーティールームなどとしても使える)まであるという総戸数100戸ほどの物件としては出色の充実具合です。

もちろんこういった差別化を行うことで幾らか販売単価は上昇しているでしょうし、オイコスの惨状に加え南向き住戸率の低さや横須賀街道沿いの立地条件なども考慮したからこその”頑張り”ではあるのでしょうが、そうは言えどもこのパフォーマンスは想像を超えていました。

前回のプライム金沢文庫

公式ホームページ
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お部屋はイーストレジデンスの68㎡の3LDK、東向き中住戸です。横須賀街道沿いになるのでそれ相応の賑やかさはありますし、向かいは金沢文庫団地(下部はユニオンセンター)の10階建なので、視界への影響も小さくありません。

間取りは70㎡に満たない小ぶりな3LDKで、ウエストレジデンスのワイドスパン中住戸のようなインパクトこそないものの、きれいに柱がアウトフレームされた美しいものになりますね。

共用廊下側の柱がきれいにアウトフレーム化されたことで玄関前にゆとりあるスペースが生まれていますし、サッシ幅はやや控えめながらも連窓サッシが採用されているのも魅力になるでしょう。逆梁工法により窓際から梁を排除出来ており、掃き出し窓のサッシ高が2.2m確保されているあたりも当物件の魅力の1つになりますね。

玄関下足スペースにはベビーカーなどを立てかけておける凹スペースもありますし、そういった点でも繊細な設計と感じます。

坪単価は213万円。そのワイドスパンの西向き中住戸は同階水準で坪単価約220万円といったところでほぼ差のない設定になっているのは正直疑問なのですが(前建までの離隔という点での優位性はあれど、ワイドスパンか否かに加え横須賀街道沿いか否かはわりと大きな差ですんで…)、そもそも当物件はオイコスとは異なり横須賀街道沿いの敷地になるわけでデベロッパー的にそこを"マイナス"とはあまり認めたくないのだと思いますけれども…。

なお、第一期一次は43戸ということで契約率次第のところはありますが、まずまずの数字となっていますね。

設備仕様面は、スケールを活かししっかりとディスポーザーが付いていますし、食洗機、キャビネット型トイレなどまずまずです。

管理費は167円/㎡。外廊下ですがディスポーザー付での水準ですのでリーズナブルです。

駐車場は全47台で身障者用を含む7台のみが平置、残りの40台が機械式になります。

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