2021年11月の首都圏マンション発売戸数

不動産経済研究所の発表によると11月の首都圏のマンション販売は、
発売戸数5,452戸(前年同月比95.4%増)
1戸あたり価格6,123万円(前年同月比3.4%アップ)
契約率79.9%(前年同月比21.8ポイントアップ)
とのことです。

前月(10月)の結果発表時点での不動産経済研究所の11月の想定は例年の11月よりも少し多いぐらいの3,500戸で、前月の記事でも言及しているようにその時点でハルミフラッグの大量供給がなされることは確定していたので、それよりももうちょい伸びるかなぐらい(4,000戸ちょっとぐらい)の印象でいたのですが、5,452戸とは驚きました。

そのハルミフラッグのサンビレッジの1期465戸、シービレッジの2期166戸(1期は五輪延期前の2019年)の計631戸に加え、ブリリアタワー浜離宮の1期1~2次72戸、ドレッセタワー新綱島の1期1次66戸、アトラスシティ世田谷船橋の1期1次120戸、ザ・パークハウス板橋大山大楠ノ杜の第1期1次76戸、プラウドタワー川口クロスの第1期135戸、パークタワー勝どきサウスの1期2次175戸などもありましたが、それでもここまでの数字になることは想像できなかったですね。

11月末までの契約による「従来の住宅ローン控除(今後も住宅ローン控除は継続する見込みだが、控除率及び控除額の減少が予想されており、その後実際にそのようになることが明らかになった)」の適用を考慮した駆け込み需要の影響は小さくなかったのは確かですが、根底にあるのはそういった特定の物件に留まらないニーズで、8割近い高い契約率からも旺盛な需要が窺えるというものです。
ハルミフラッグが関係ない、都下、埼玉県、千葉県の契約率8割超(千葉は9割超!)にはさらに驚かされますが、新築一般住宅の住宅ローン控除限度額4,000万円に物件価格が近い(ほぼフルで借入れすることが前提)方が減税縮小のインパクト(※1)がより大きくなるのでその影響が強いのでしょうね。
※1)借入限度額4,000万円の新築一般住宅の場合、控除額縮小による影響は13年間でおよそ200万円になるので4,000万円の物件だと約5%のインパクトであるのに対し8,000万円の物件だと約2.5%と小さくなる。

なお、ハルミフラッグは631戸が即日完売(※2)ですので、ハルミフラッグがなければ契約率が下がりますが、それでも残りの4,821戸の契約率は77.3%と2020年4月以来の高水準ですし、久しぶりに在庫数が前月比で321戸増加してはいるものの、11月末時点での在庫数5,697戸は昨年11月末の6,839戸よりも遥かに少ないことからも市況の強さが窺えるというものですね。
※2)ハルミフラッグの631戸は平均倍率8.7倍/最高倍率111倍という驚異的な数字を記録しています。五輪延期前の2019年夏に行われた第1期についてはこちらの記事(2019年8月の首都圏マンション発売戸数)をご参照いただければと思いますが、その当時を上回る数字で、凄い人気になるとは思っていましたがその感覚も上回るぐらいのものになりました。2019年夏の第1期のときは最高倍率は1億ちょっとのルーバル付の最上階プランでしたが、今回の111倍もやっぱり最上階住戸らしいですね。

なお、価格に関しては、前回の記事で言及した通りで、ハルミフラッグにより単価は前年同月比3.5%ダウンしています。
ハルミフラッグ(特にシービレッジ)は面積帯の大きなものが多く631戸の平均価格は7,621万円になるのでむしろグロスでの11月平均6,123万円もここ最近にしては大人しい印象になるでしょうね。

ただ、ハルミフラッグの631戸があっても都区部のシェアは38.4%とかなり低くなっており、平均価格の伸び悩みは相対的に価格が低いエリアでの供給が盛んだったことの証左でもあるでしょう。前月以前から述べているように直近の高騰により都心部の高値警戒感がそれなりに高まっていると感じていますし(都心部の昨今の高価格帯からすると住宅ローン控除の縮小幅程度では駆け込みの要因にはなりづらい)、そのあたりの影響は小さくないでしょうね。

なお、恒例の億ション比率は約7.3%ということで平均的な水準よりも気持ち高いぐらいでした。

ちなみに、11月は近畿圏の平均価格が6,041万円(平時はほぼ4,000万円台)で、首都圏に肉薄しているのですが、関西の方はご存知の通り超高額物件ブリリアタワー堂島の第1期1次130戸の影響になります。久しぶりに関西の物件を取り上げようかと思ったぐらい特長のある物件なのでマンション好きの方にはぜひ見てもらいたいですね。

お次は中古市場を見ていきましょう。
以下はレインズマーケットウォッチの11月の月例速報です。

・中古マンション成約物件(首都圏)
3,416件(前年同月比-5.6%)
60.92万円/㎡(前年同月比+7.1%)
3,897万円(前年同月比+3.8%)
専有面積63.98㎡(前年同月比-3.1%)
築年数23.39年(前年同月22.15年)

いずれの数字も前月(10月)と大きな差はなく、価格がとんでもない水準になっていた9月と比べれば落ち着いていると思います。
ただ、依然として成約価格は18か月連続で前年同月比を上回っており、まだ上昇基調にあるのは確かですし、新規登録単価が…。

新規登録単価は9月66.53万円/㎡、10月66.84万円/㎡を優に上回る68.1万円/㎡ということで、成約単価との単価差はさらに広がり驚きの7.18万円/㎡に…。

以下は前月の記事の引用で、
【面倒だなと思いつつも過去1年のそれぞれの月の乖離を計算してみたところ、「3.59(2020年10月)、1.89、3.61、1.82、3.74、3.54、4.39、4.77、4.39、4.74、5.18、4.4(2021年9月)」ということで、いかに今月の数字がヤバイかお分かりいただけるのではないでしょうか。】
10月の6.35万円/㎡にも驚愕しましたが、今月はさらに乖離が大きくなってしまいました…。

11月の新規登録件数は19年8月以来27ヶ月ぶりに前年同月を上回り、コロナの落ち着き(?)と共にようやく底を打った感が出てきましたし、売れたらラッキーぐらいのチャレンジ価格で売り出しているとかではなく、ある程度の短い期間で買い手を見つけたいと考えている方であれは類似物件の直近の売出価格に合わせるのではなく”気持ち現実的な水準”を心掛けた方が良いかもしれませんね。
この差は成約時に値引きなどを考慮しても異常な数字なので、遅かれ早かれ是正(縮小)されるはずですが、「成約単価が上がるのか、新規登録価格が下がるのか」は非常に興味深いところで、今後の中古市場を占う上で非常に重要な数字になってくると思います。

さて次月12月の新築供給ですが、不動産経済研究所では5,500戸ほどが見込まれています。
過去4年の12月は6,000~7,000戸台なので、その11月の大量供給、従来の住宅ローン控除期限後の反動(本来ならば年末に供給する予定だったものを駆け込み希望者に合わせる形で前倒しして供給した)などが考慮されているはずで、実際に個々の物件をウォッチしている私の感覚からしても例年よりも少なくなりそうな印象ではありますね。

ただ、もともと12月は1年で最も供給が盛んな月ですし、プレミスト王子神谷の第1期135戸、プラウド宇都宮の第1期85戸、ファーストリンクレジデンスの第1期73戸、リビオシティ南砂町ステーションサイトの第1期70戸などといったそこそこに話題性のある供給が見込まれますので、販売戸数と共に契約率に注目したいですね。

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2021/12/18 (Sat) 23:10 | REPLY |   


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