2021年全国マンション市場動向②【BIG4及び首都圏の存在感は下がる一方】
昨日の記事の後編として、不動産経済研究所発表の2021年の全国マンション市場動向における、デベロッパー別の発売戸数を見ていきましょう。
⇒2021年全国マンション市場動向①
1位:野村不動産 4,014戸(前年2位)
2位:三井不動産レジデンシャル 3,982戸(前年4位)
3位:プレサンスコーポレーション 3,950戸(前年1位)
4位:大和ハウス工業 3,634戸(前年7位)
5位:三菱地所レジデンス 2,214戸(前年8位)
※今回から「定期借地権マンション」もカウントされるようになっています。デベロッパーの存在感という点では所有権も定期借地権も同じですし、こちらの方がより実態を表していると言えるでしょう。
コロナ禍で大きな変動が見られた2020年ほどではないのですが2021年もわりと上下動がありました。
1位は野村不動産で、2012年以来の返り咲き、また、4位となった大和ハウス工業の躍進も目立ちますね。
ただ、こちらには共通した理由があり、それは”首都圏や近畿圏以外での供給が豊富”という点です。コロナ禍が始まった2020年もそうだったのですが、首都圏・近畿圏以外のエリア(以下、「その他エリア」とします)のシェアが高まっており、それ以前から地方都市での実績が豊富だった野村不動産と大和ハウス工業が上位にランクインするというのは自然な流れなのです。
BIG4の他3社(三井・三菱・住友)の「その他エリア」での年間供給戸数が200~300戸台であるのに対し、野村不動産は832戸、そして大和ハウス工業に至っては1,276戸ということで、地方都市市場を握っている、ノウハウを蓄積していることが両社が躍進した最大の理由になります。
BIG4以外でトップ10にランクインしているプレサンスコーポレーション、エスリード、あなぶき興産、フージャースコーポレーションの4社も「その他エリア」での供給が1,000戸を超えており、最大の市場である首都圏での供給がモノをいった数年前とはかなり異なる様相になっていると言えるでしょう。
一方で、低調だったのはBIG4の一角である住友不動産ですね。
2019年まで6年連続トップ、2020年も3位だった住友不動産は6位で2,211戸という結果でした。
住友不動産は、2018年末に年間供給戸数No.1達成を意図したと思われるシティタワーズ東京ベイなどの大量供給(要望書が入っていない中での大量供給で、短期的にはほぼ在庫という状況になった)を行ったことがあるぐらいですし、現状の実質在庫(物件自体は完成しているが高値追及で未だ供給せずに少しずつ販売し続けている物件が少なくない)を供給すればもっと上位にランクインすることは十分に可能だったはずです。
しかしながら、1位の野村不動産との差は2,000戸近くあり、無理して1位を目指すぐらいなら来年以降に回したほうが…と言ったような判断もあったのかなと。
住友不動産の2021年の首都圏での供給は”たったの1,161戸”であり、BIG4とは思えないほどの低調な数字だと思ってはしまうものの、2022年は大規模物件が豊富になりそうですしね(2022年ちょっと気になるマンション住友不動産編)。
なお、そういった低調な住友不動産の影響もありBIG4比率は2021年も大きく低下しました。
BIG4比率の推移は「24.2%(2013年)⇒25.3%⇒23.4%⇒22.9%(2016年)⇒24.8%⇒24.2%⇒21.7%⇒19.0%(2020年)」という感じだったのですが、2021年はついに16.0%になってしまいました。
2020~2021年に関してはやはりコロナ禍の影響もあるとは思いますが、やはり大手デベロッパーはマンション分譲事業以外の収入源が多々あり無理してまで供給する必要はないということが多分に影響した結果だと思います。マンションにするにしても分譲ではなく賃貸にするなどのケースが相変わらず多いと感じますし、この傾向がさらに続くようだと大手物件の希少性が高くなりそうですね。
さて、ここからは、例年通りBIG4以外のデベロッパーで気になったところをコメントしていきますが、今年は以下の3社が躍進していました。
大和ハウス工業:7位(2,039戸)⇒4位(3,634戸)
東京建物:20位圏外⇒12位(1,645戸)
関電不動産開発:20位圏外⇒14位(1,521戸)
大和ハウス工業は上述の「その他エリア」に限らず、首都圏での1,614戸(首都圏4位)も立派ですし、物件の供給エリアやコンセプト(ないしパフォーマンス)もBIG4に近いものがあるので今後もBIG4に割り入るような存在になっていけるか否かに注目ですね。我が国のマンション市場にとっても興味深い点、重要な点と言えるでしょう。
東京建物に関しては2020年が低調過ぎた反動というのもあると思いますが、2022年もブリリアタワー池袋ウエスト、ブリリアシティ石神井公園アトラスなどの供給がありますし、楽しみですね。
また、「シエリア」の関電不動産開発は近畿圏での供給が多く、首都圏での供給はシエリア町屋のようなコンパクトも少なくありません。近畿圏での勢いそのままに首都圏での供給をもっと見たいと思わせてくれるデベロッパーの1つです。
また、2020年から大きな順位変動はありませんでしたが、10位の日鉄興和不動産は、BIG4及び「その他エリア」での供給が多いデベロッパーを除き”唯一トップ10にランクイン”したデベロッパーで、2021年も存在感が高かったですね。
2020年同様に大手デベロッパーのシェアが低下する中での受け皿としての役割を果たしたと言えます。
⇒2021年全国マンション市場動向①
1位:野村不動産 4,014戸(前年2位)
2位:三井不動産レジデンシャル 3,982戸(前年4位)
3位:プレサンスコーポレーション 3,950戸(前年1位)
4位:大和ハウス工業 3,634戸(前年7位)
5位:三菱地所レジデンス 2,214戸(前年8位)
※今回から「定期借地権マンション」もカウントされるようになっています。デベロッパーの存在感という点では所有権も定期借地権も同じですし、こちらの方がより実態を表していると言えるでしょう。
コロナ禍で大きな変動が見られた2020年ほどではないのですが2021年もわりと上下動がありました。
1位は野村不動産で、2012年以来の返り咲き、また、4位となった大和ハウス工業の躍進も目立ちますね。
ただ、こちらには共通した理由があり、それは”首都圏や近畿圏以外での供給が豊富”という点です。コロナ禍が始まった2020年もそうだったのですが、首都圏・近畿圏以外のエリア(以下、「その他エリア」とします)のシェアが高まっており、それ以前から地方都市での実績が豊富だった野村不動産と大和ハウス工業が上位にランクインするというのは自然な流れなのです。
BIG4の他3社(三井・三菱・住友)の「その他エリア」での年間供給戸数が200~300戸台であるのに対し、野村不動産は832戸、そして大和ハウス工業に至っては1,276戸ということで、地方都市市場を握っている、ノウハウを蓄積していることが両社が躍進した最大の理由になります。
BIG4以外でトップ10にランクインしているプレサンスコーポレーション、エスリード、あなぶき興産、フージャースコーポレーションの4社も「その他エリア」での供給が1,000戸を超えており、最大の市場である首都圏での供給がモノをいった数年前とはかなり異なる様相になっていると言えるでしょう。
一方で、低調だったのはBIG4の一角である住友不動産ですね。
2019年まで6年連続トップ、2020年も3位だった住友不動産は6位で2,211戸という結果でした。
住友不動産は、2018年末に年間供給戸数No.1達成を意図したと思われるシティタワーズ東京ベイなどの大量供給(要望書が入っていない中での大量供給で、短期的にはほぼ在庫という状況になった)を行ったことがあるぐらいですし、現状の実質在庫(物件自体は完成しているが高値追及で未だ供給せずに少しずつ販売し続けている物件が少なくない)を供給すればもっと上位にランクインすることは十分に可能だったはずです。
しかしながら、1位の野村不動産との差は2,000戸近くあり、無理して1位を目指すぐらいなら来年以降に回したほうが…と言ったような判断もあったのかなと。
住友不動産の2021年の首都圏での供給は”たったの1,161戸”であり、BIG4とは思えないほどの低調な数字だと思ってはしまうものの、2022年は大規模物件が豊富になりそうですしね(2022年ちょっと気になるマンション住友不動産編)。
なお、そういった低調な住友不動産の影響もありBIG4比率は2021年も大きく低下しました。
BIG4比率の推移は「24.2%(2013年)⇒25.3%⇒23.4%⇒22.9%(2016年)⇒24.8%⇒24.2%⇒21.7%⇒19.0%(2020年)」という感じだったのですが、2021年はついに16.0%になってしまいました。
2020~2021年に関してはやはりコロナ禍の影響もあるとは思いますが、やはり大手デベロッパーはマンション分譲事業以外の収入源が多々あり無理してまで供給する必要はないということが多分に影響した結果だと思います。マンションにするにしても分譲ではなく賃貸にするなどのケースが相変わらず多いと感じますし、この傾向がさらに続くようだと大手物件の希少性が高くなりそうですね。
さて、ここからは、例年通りBIG4以外のデベロッパーで気になったところをコメントしていきますが、今年は以下の3社が躍進していました。
大和ハウス工業:7位(2,039戸)⇒4位(3,634戸)
東京建物:20位圏外⇒12位(1,645戸)
関電不動産開発:20位圏外⇒14位(1,521戸)
大和ハウス工業は上述の「その他エリア」に限らず、首都圏での1,614戸(首都圏4位)も立派ですし、物件の供給エリアやコンセプト(ないしパフォーマンス)もBIG4に近いものがあるので今後もBIG4に割り入るような存在になっていけるか否かに注目ですね。我が国のマンション市場にとっても興味深い点、重要な点と言えるでしょう。
東京建物に関しては2020年が低調過ぎた反動というのもあると思いますが、2022年もブリリアタワー池袋ウエスト、ブリリアシティ石神井公園アトラスなどの供給がありますし、楽しみですね。
また、「シエリア」の関電不動産開発は近畿圏での供給が多く、首都圏での供給はシエリア町屋のようなコンパクトも少なくありません。近畿圏での勢いそのままに首都圏での供給をもっと見たいと思わせてくれるデベロッパーの1つです。
また、2020年から大きな順位変動はありませんでしたが、10位の日鉄興和不動産は、BIG4及び「その他エリア」での供給が多いデベロッパーを除き”唯一トップ10にランクイン”したデベロッパーで、2021年も存在感が高かったですね。
2020年同様に大手デベロッパーのシェアが低下する中での受け皿としての役割を果たしたと言えます。
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