台東区・江東区・荒川区・墨田区のマンション市況【2022年市場動向フィードバック④】

本日の2022年市場動向フィードバックの第4回目では、台東区・江東区・荒川区・墨田区の詳細な分析を行います。
※首都圏や都区部の全体感については以下をご覧ください。
2022年全国マンション市場動向①【高価格帯エリアでの供給が低調】
2022年全国マンション市場動向②【デベロッパー別発売戸数ランキング】
2022年市場動向フィードバック①【都心区から外周区へ、東から西へ】

不動産経済研究所によると4区の数字はこちらになります(「順位」や「前年比」などに関しては私が計算したものになります)。
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さらに、2006年以降の平均単価の動きをグラフで表したものが以下になります。
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・台東区【そこそこの坪単価上昇率だが、今年も平均専有面積は最小】
昨年の同記事で、
高い利便性のわりにはまだ400万円に達していないためこのままコロナ禍が収まりインバウンド需要が戻ればまだ伸びる余地のあるエリアだとは思いますが、どうでしょうか。
まぁ、2022年は住不のザ・浅草レジデンスがガッツリ入ってくるため上がるのは確実ですけど…。
と述べたように、2022年はザ・浅草レジデンスが57戸供給され、最も多かったのですが、それでも全体500戸のうちの1割強ということで全体に莫大な影響を与えたわけではありません。

平均坪単価は2021年比で110%の上昇と、コロナ禍の落ち着きもありそういった目玉物件を抜きにしてもしっかりとした上昇が窺えはするのですが、相変わらず平均専有面積が23区中最下位となる中での単価ではあることに着目すべきでしょうね。

平均坪単価の過去比上昇率も上位の160~170%台と比べると小さいですし、本日取り上げる他3区ほどではないのですが、台東区にも”東ゆえの伸び悩み”をうっすらと感じます。

参考)2022年の主な供給(カッコ内は平均坪単価)
ザ・浅草レジデンス(約505万円)
オープンレジデンシア上野入谷(約350万円)
ザ・パークハウスアーバンス御徒町(約435万円)

・江東区【今年もファミリータイプ中心のエリアなりの伸び悩み感】
平均坪単価は2021年から若干下がったものの、その2021年や2019年ともほぼ同じ水準で、上昇する区も少なくない中で随分とおとなしい結果になりましたね。

2020~2021年にかけて分譲されたブランズタワー豊洲が完売し、2022年は江東区の中で高値帯となる湾岸タワマンの供給が減ったことが単価の伸び悩みの最大の要因ではあるのですが、昨年に続きジオ南砂町、さらにMJR深川住吉猿江恩賜公園レジデンスが多くの戸数を供給したように、少々駅距離があるようなケースであろうとも都心アクセスが良好なエリアの「300~350万円」のニーズが江東区人気を支えているところもあると思います。

そのため、物件の偏り次第で平均坪単価は伸びてもエリア全体での顕著な価格上昇はそう簡単ではない印象を受けますね。

むろん最寄駅にもよりますが、そのようにファミリーニーズの強いエリアであり、平均専有面積が本日取り上げる他3区とは大きく異なります。そういった点でも単価を上げにくいところがあるでしょうね。

直近のパークホームズ東陽町の上層階は駅近とはいえ”新価格”感がありましたが…。

参考)2022年の主な供給(カッコ内は平均坪単価)
猿江恩賜公園レジデンス(約355万円)
プラウドタワー亀戸クロス(約375万円)
MJR深川住吉(約310万円)
ジオ南砂町(約295万円)

・荒川区【日暮里・西日暮里物件が少なくてもしっかりとした水準】
平均坪単価の過去比上昇率は2年連続2位となりました。

2022年は、2021年の日暮里・西日暮里駅の駅近×コンパクトな供給が減ったのですが、以下の町屋の名が付いた2物件でもかなりしっかりとした水準でしたし、荒川区はこのような”特段の高額物件の影響がない”中で目立った単価上昇を見せているところに毎年のように驚かされますね。

昨年の記事でも述べたように、10年ほど前の荒川区は平均坪単価100万円台だったわけで、そういった時代に荒川区物件に目をつけていた方は素晴らしい先見の明を持っていたと言えるでしょうね。

台東区や墨田区同様に10年ほど前と比べ大きく平均専有面積を落とした中での単価上昇で、グロスの嵩まないコンパクト目の供給を強めることでお茶を濁しているところがあるのは確かですが(コンパクト目だからこそ単価が伸びている)、それでもこの上昇率は凄いです。

参考)2022年の主な供給(カッコ内は平均坪単価)
プラウド町屋(約330万円)
オープンレジデンシア町屋(約320万円)

・墨田区【完全にクレヴィアだなぁ…】
2021年はクレヴィア両国国技館通り(墨田区全体61戸のうちクレヴィアが36戸)の影響で初の400万円超(前年比132%)という突出した水準まで伸びていました。

ただ、2022年もトップ供給のザ・パークハウス曳舟(58戸)に次ぎ、クレヴィアが32戸供給されており、やはり結構な高値水準になっていますね。

今年も墨田区全体で148戸しか供給されておらず、例年全体の供給戸数が少ないため特定の物件の影響が避けられません。

そのわりには過去比での平均坪単価上昇率は159%(10位)に過ぎないですし、台東区・墨田区同様にコンパクト目の物件の供給が増えることで単価が上がっているのは確かでしょう(ファミリータイプ中心のクレヴィアはかなり販売に苦労したように、グロスの嵩むファミリータイプの単価を上げるのは容易ではない)。

参考)2022年の主な供給(カッコ内は平均坪単価)
ザ・パークハウス曳舟(約335万円)

◎台東・江東・荒川・墨田の総評
ここ数年のこういった分析記事の際には必ずと言ってもいいぐらいに申し上げてきたことの1つに、”東高西低”の傾向(10年ほど前からの価格上昇率を23区の東西で比べた場合)があったのですが、昨年の同記事で”多少の頭打ち感”を覚えましたし、今年の数字にはさらにそれが表れているように思います。

台東区こそ前年比でしっかりと上昇してはいるものの、台東区・荒川区・墨田区は平均専有面積が23区中21~23位の常連であり、コンパクトのお値段もすでにかなり上昇してしまっているため、さらに上の水準を目指すとなると難しいところもあるように思います。

直近では隅田川沿いの稀な地でリビオ森下リバーテラスがしっかりとしたお値段で供給されていますし、上述のように江東区の内陸寄り(湾岸エリアではないという意味)でもパークホームズ東陽町がかなりの価格帯になるなど、立地次第ではさらなる高価格物件が出てくるとは思うのですが、西側のエリアのように平均専有面積60㎡超を記録しつつ過去比での平均坪単価上昇率が160%を上回るのにはかなりのハードルがあると感じています。

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