2023年8月の首都圏マンション発売戸数

本日は毎月恒例の市況分析をお送りします。

不動産経済研究所の発表によると2023年8月の首都圏のマンション販売は、
発売戸数1,469戸(前年同月比26.4%増)
1戸あたり価格7,195万円(前年同月比17.9%アップ)
契約率68.6%(前年同月比6.6ポイントアップ)
とのことです。

前月の記事で
8月は不動産経済研究所によると1,500戸の供給が見込まれています。例年8月はお盆休みのモデルルームも多く、1,000~2,000戸前後になることが多いですね。
とりわけ多くを供給する物件は見当たりませんし、今年の8月も傾向そのままの結果になるのではないでしょうか。
と述べた通りの結果になりました。

前年に比べると戸数は多かったのですが、それでも平月に比べると少な目ではありますし、特段の目玉物件もなかったためか、契約率も2ヶ月ぶりの60%台ということで低調な結果になっています。

ただ、月末の在庫数に関しては8月末も前月末比で138戸減少しており、契約率が低調な中(今月発売されたものにおいて相当数の在庫が生じている中)でも在庫が減っていることに驚かされますね。近年で最も在庫が少なかったのは昨年8月末の4,762戸だったのですが、それを下回っています。

一方、目玉的な物件がない中で、平均価格は7,000万円超と平時(?)の6,000万円台と比べると高くはあるのですが、これに関しては都区部の供給割合が高かったことが影響した結果でしょう。

8月の全体戸数に占める都区部の割合は58.4%ということで、ハルミフラッグSKYDUOの大量供給があった先月はともかく、普段の40%前後と比べるとかなり高くなっているのです(ちなみに、2022年の首都圏年間供給戸数に占める都区部の割合は約36.5%)。
8月の都区部の平均価格8,597万円に対し、それ以外のエリア(都下・神奈川・埼玉・千葉)の平均価格は5,226万円で、仮にこちらの価格で比率が「4(都区部):6(それ以外)」としたならば首都圏全体の平均価格は6,574万円という近年よく見られる水準になるわけです。

ちなみに、そのように都区部の割合が多かったため、必然ではあるのですが8月の億ション比率は約15.0%という高水準になっています。

続いて、中古市場を見ていきましょう。
以下はレインズマーケットウォッチの8月の月例速報です。

・中古マンション成約物件(首都圏)
2,367件(前年同月比+0.9%)
74.08万円/㎡(前年同月比+10.1%)
4,704万円(前年同月比+9.9%)
専有面積63.50㎡(前年同月比-0.2%)
築年数24.19年(前年同月23.87年)

件数自体は例年の8月同様に少な目ではあるのですが、今月もまたまた凄いことになりましたね…。
平均単価は6~7月の約72万円からさらに2万円ほどの強烈な上昇を記録し、74万円超になってしまいました。前年同月比では10%超の上昇率ですし、前月申し上げた「成約単価>新規登録単価」という異常事態もそのまま、というか成約単価が新規登録単価を遥かに上回るという意味不明な状況が生じています…。
その74万円ちょっとの成約単価に対し新規登録単価は71.77万円/㎡、在庫単価も73.07万円/㎡ということで、「高い物件ほど売れている???」状況になっているのです。

あまりに不思議な数字なので、エリア別のデータも確認してみたのですが、どうやらこの差は城西地区(新宿区・渋谷区・杉並区・中野区)と城東地区(台東区・江東区・江戸川区・墨田区・葛飾区・足立区・荒川区)において顕著な「成約単価>>新規登録単価」が生じ、かつ、8月はそのエリアの成約件数が多かったことが影響しているようですね。

都心3区(千代田区・中央区・港区)を除いた都区部(城西・城東・城南・城北)は以前からそういった傾向が多かれ少なかれ存在しており、これらのエリアにおいては、タワマンなどを始めとした”エリア内で相対的に単価の高い物件の売れ行きが良く”、その他の物件の売れ行きが低調な傾向があります。
高額エリア(高額物件)とそうでないエリア(それ以外の物件)で人気に偏りが生じやすいエリアゆえの数字なのですが、今月に関しては、前月7月のハルミフラッグSKYDUO落選により一時的に”類似物件(タワマンを始めとした大規模物件)の中古ニーズ”がガッツリ増えた可能性もあるのではないでしょうか。

上述のように8月はお盆を挟み成約件数が低調になる時期ですので何かしらの特殊要因が生じることで全体の数字にも大きな影響が出やすいですからね。

この”逆転現象”がいつまでも続くとは思えず、近々是正されるはずですが、中古市場で「売れる物件or売れない物件」という二極化は「慢性的な在庫増加」に伴いより顕著になっていくのは間違いないところでしょう。物件を選ぶ際には今まで以上にそういった点に注意を払うべきでしょうね(※良い物件・人気物件は高値をふっかけられがちですし、タイミングやスピード感といった点でも中古での物件選びは新築よりも遥かに難しいものです)。

ちなみにですが、8月末の在庫は前月末比で300戸弱減少し、なんとなんと16ヶ月ぶりに減少しました!!!
一過性のものと思われますし、「在庫増加」の流れは今後も続くと思うのですが、新築が手が届きにくい水準にまで高騰する中で中古ニーズがさらに高まってきている側面もあると思われます。

さて、新築に話を戻しまして、9月は不動産経済研究所によると例年よりも少し多めの2,500戸の供給が見込まれています。
主な供給としては、プラウド世田谷砧ガーデンテラス(第1期80戸)、グランドシティタワー池袋(第1期60戸)、エクセレントシティ本厚木駅前(第1期80戸)、プラウド青葉台(第1期64戸)、他シティタワー綾瀬、プロミライズ青葉台といった大規模物件も入ってくる可能性がありますね。
2,500戸まではいかないような気がしますが、例年よりはやや多めの2,000戸台前半に乗ってくる可能性は高く、引き続き在庫が減少するか否かにも注目すべきでしょう。

0 Comments



Post a comment